戦争や社会不安で動く「金(ゴールド)」
①経済不安や株価の下落
金(ゴールド)は不景気になったときにその価値が高まります。世界中のどこでも換金できるため、たとえ自国の通貨の価値が下がっても、金があれば資産を守ることができるからです。そのため、経済不安や株価の下落は、金の価値を上昇させます。実際、コロナショックが起きて株価は大きく下落していますが、金は大きく上昇しています。
一方で、経済が安定して株価が上昇した際には金融商品への投資が有利となるため、相対的に金の価格が下がる傾向にあります。
コロナショックで上昇する金価格は過去最高値を更新!
②米ドルとの関係性
金は米ドルと正反対の値動きをします。例えば、アメリカ経済が好調となって米ドルの価格が上がると、金の価値は下がる傾向にあります。そのため、金への投資にあたっては、米ドルのレートに注目することが必要です。
わかりやすい関係性があると投資がしやすいね
③戦争リスク
国際関係のバランスが崩れて戦争のリスクが高まると、有事の資産である金の価値は上昇します。
トランプ米政権は、イラン・北朝鮮・ベネズエラの3カ国に対して、いわゆる「最大限の圧力」をかけ続けており、いずれの国も降参するどころかますます態度を硬化させています。アメリカと中国・ロシアという大国同士の関係も悪化して世界の安定が損なわれるなか、東欧や西欧で大規模な紛争が起こる懸念も高まっています。このような国際情勢にも注目する必要があります。
世界の天候に異変が起きたら「小麦」に注目
①天候要因
小麦価格の変動の要因となるのは天候不良などによる不作です。2007年には欧州での天候不順とオーストラリアでの干ばつによる不作、2010年にはロシアで干ばつ、2012年にはアメリカでの降水量不足での不作がありました。
②生産国の動向
小麦の生産や在庫において、アメリカ、EU、ロシア、オーストラリアが重要な鍵を握っています。これらの国の作柄状況が小麦相場に影響を与えます。
地球上で「どの地域が雨不足か」を知ると小麦価格を先読みできる
③有事の小麦買い
今年の小麦相場は、潤沢な生産量からはほぼ一貫して値下りしていました。しかし、コロナショックが始まってから安値修正の動きが強まり、小麦価格は急上昇しています。
その背景として指摘されているのが、新型コロナウイルスの感染被害拡大を受け、消費者が小麦を原料とする食料品を買いだめしている影響で小麦価格が急上昇しています。新型コロナウイルスの感染被害の中心が中国から欧米に移動する中、欧米諸国は入国規制の強化と同時に、国内でも外出規制の動きを強め始めています。
「有事の金買い」という言葉があるけど、今は「有事の小麦買い」とも言える現象が起きている!
産出量が価格の決め手となる「原油」
①OPECの動向
石油輸出国機構(OPEC)は、世界の原油生産量のうち約4割を占めています。加盟国が協調してOPEC全体の生産量や国別生産の上限設定等の需給調整を行うことにより、市場に対する影響力を保有しています。
OPECが産出量を調整するだけで原油の価格が動くのね
原油価格が大きく下落するとOPECで協調減産の合意がなされることが多く、そうすると原油価格が反発する傾向にあります。
②米国シェールオイルの生産状況
シェール革命により2014年には米国が世界最大の産油国となりました。そのため、米国のシェールオイルの動向は原油価格の行方を判断するうえで重要なものとなっています。
近年では、アメリカの台頭に対抗するため中東諸国やロシアが「シェールオイル生産の原価割れを狙った価格引き下げ策」を行うなど、市場価格に大きく関わる要因となっています。
産油国の中心だった中東やロシアは黙ってはいられないよね
なお、米国のシェールオイルの動向を探るにはリグ稼働数が先行的な指標となります。リグ稼働数はシェールオイルの開発の為に掘削を実施している装置の数を表しており、リグ稼働数の変動のみで原油相場の変動要因になることがあります。
③米国の在庫状況
米国は世界最大の原油生産国であるとともに、世界最大規模の消費国です。その実態は、米国エネルギー情報局(EIA)が毎週水曜日に発表する原油在庫量で把握することができます。EIAが発表する原油在庫が増加すれば価格低下要因となり、また、減少すれば上昇要因になります。
原油は「生産量」だけじゃなく「在庫量」も大切なのね
工業分野での需要がカギとなる「銀」
①工業分野での多様な需要
銀は需要の約6割が工業用です。その用途は半導体などの電子材料分野をはじめ多岐にわたります。これが金と大きく違う点です。経済危機状況下で金は安全資産として買われて値を上げますが、銀は工業需要の減速に伴い値を下げることから、金とは対照的な値動きをする場合があります。
コロナの影響で工場が稼働しないと「銀の需要」が落ちる。。
②副産物としての銀
銀は、メキシコやペルー、中国など、世界の広い地域で生産されています。銀そのものを採掘するというよりも、鉛や亜鉛、銅といった鉱石の副産物として生産される割合が高いのが特徴です。したがって、鉛、亜鉛、銅の需給関係が銀相場に影響する傾向にあります。
③金融不安などの経済状況の変化
金融不安など経済状況の変化によって、銀などの貴金属相場は大きく変動する傾向にあります。金融不安だけではなく、世界各国で通貨価値や株式市場に不安が生じると、銀などの現物市場が活発化し、相場の変動を招きやすいと言われています。
ガソリン需要が影響する「とうもろこし」
①エタノールの需要
とうもろこしを原料とする「エタノール」の需要がとうもろこし相場に影響を与えます。米国では2005年に、ガソリンにエタノールなどの再生可能な燃料を混ぜることを義務付けました。このような各国政府の燃料政策が、とうもろこし価格に影響を与えます。
エタノールとは
②天候要因
とうもろこしは、降水量や気温によって生育度、収穫の進捗が変わってきます。したがって天候が大きな価格変動要因となります。特に、作付けを開始する4月中旬から、収穫の10月中旬~11月にかけての天候です。
地域としては、とうもろこしの大産地である米中西部が特に注目されます。該当地域でのハリケーンや干ばつなどがあると、生産量の減少が見込まれ価格は上昇する傾向にあります。
世界的な気候変動はとうもろこし価格に大きく影響する
③家畜の頭数
世界最大のとうもろこし消費国である米国の需要のうち、約4割弱は家畜の飼料向けです。そのため、家畜の頭数も価格の変動要因になります(家畜が増えると飼料需要が増えて価格が上がります)。
一般に経済が発展し、所得が増加すると肉の需要が増加します。したがって、米国の雇用環境が良いほど米国の牛肉の消費が伸びて家畜が増えやすく、とうもろこしの価格上昇につながります。