海外人材をEOR(雇用主代行)で雇うと、現地の雇用・社会保険・源泉はEOR事業者が担います。一方で、支払う側の日本企業にも、自社の法人税・消費税・源泉徴収・会計処理という「日本側」の論点が残ります。
この記事では、EOR利用料や海外人件費を支払う日本企業が、経理・税務で押さえておきたい論点を整理します。具体的な処理は会社ごとの事情で変わるため、最終的な判断は必ず税理士にご確認ください。EORの基本はEORとはをご覧ください。
結論:日本側で押さえる5つの論点
EORを使う日本企業が、自社の税務・会計で確認すべき論点は次の5つです。
- ① 損金算入:EOR利用料・海外人件費を法人税の費用にできるか(原則は損金、証憑が前提)。
- ② 消費税の内外判定:国外で提供される役務は原則「不課税(対象外)」。
- ③ 源泉徴収:対価の性質と役務の提供地で判定。役務が国外なら原則不要。
- ④ 為替差損益:外貨建て支払いの換算と期末評価。
- ⑤ 証憑・移転価格:契約書・請求書の保存、グループ間取引の価格。
いずれも前提や例外があり、個別の取扱いは税理士・所轄税務署でご確認ください。
EORが担う範囲と、日本側に残る範囲
現地での給与支払い・社会保険・現地の源泉徴収は、雇用主であるEOR事業者が担います。役割分担の詳細はEORと税務(源泉・PE・二重課税)を参照してください。
これに対し、EORへの支払いを自社の帳簿でどう処理し、日本の税務でどう扱うかは日本企業側の責任です。以下、論点ごとに見ていきます。
① 損金算入(法人税)
EOR利用料や、それを通じて負担する海外人件費は、事業のための費用であれば原則として損金に算入できます。前提として、業務の実態・契約・請求書などの証憑がそろっていることが重要です。
グループ会社が関わる場合の注意
海外の関連会社が関与する場合は、移転価格税制や寄附金の論点が生じ得ます。第三者価格として妥当か、対価に見合う役務提供の実態があるかが問われます。グループ内取引がある場合は事前に税理士へ相談してください。
② 消費税の扱い(内外判定)
役務の提供は、原則としてその役務が行われた場所で国内取引か国外取引かを判定します。海外で行われる雇用・給与処理などの役務は国外取引にあたり、原則として消費税は不課税(対象外)です。
注意:電気通信利用役務・リバースチャージ
ただし、サービスの内容に「事業者向け電気通信利用役務の提供」(インターネット経由のソフトウェア提供・広告配信など)が含まれる場合は、受け手である日本企業に申告納税義務が生じる「リバースチャージ方式」の対象になり得ます。これは課税売上割合が95%未満の一般課税事業者などが対象です。
EORは通常、人事・雇用の役務であり電気通信利用役務には当たりませんが、プラットフォーム利用料などの性格を含む契約もあるため、請求書の内訳と契約内容で判断し、税理士に確認してください。
③ 源泉徴収(日本側で必要なケース)
非居住者や外国法人への支払いで源泉徴収が必要かは、「日本企業が支払うから」ではなく、対価の性質と役務が行われた場所(国内源泉所得かどうか)で判定します。
役務が国外で行われるEORの対価は、原則として国内源泉所得に該当せず、日本側での源泉徴収は不要となるのが一般的です。ただし、使用料に該当する部分や、国内で行われた役務に対応する部分があれば源泉の対象になり得ます。
租税条約・二重控除の回避
源泉が必要となる場合でも、租税条約により軽減・免除されることがあります(届出書の提出が前提)。また、EORが現地で源泉している分と、日本側の処理を二重に行わないよう、対価の内訳を整理しておくことが大切です。
④ 為替差損益の処理
EOR料金や海外人件費を外貨建てで支払う場合、取引時のレートで円換算し、決済時や期末に為替差損益を計上します。為替の変動で総額が動くため、予算管理上も把握しておきたい論点です。
為替を含む総額の考え方は複数国のコスト比較や費用シミュレーションもご覧ください。
⑤ 証憑・実務(契約書・請求書・勘定科目)
税務調査でも問われるのは取引の実態を示す証憑(契約書・請求書・業務の記録)です。EOR利用料・海外人件費・手数料の内訳が請求書で確認できる状態にしておきましょう。
勘定科目は会社の方針により異なりますが、EOR手数料は「支払手数料」や「外注費」、人件費相当分はその性質に応じて整理するのが一般的です。科目の選択や計上タイミングは顧問税理士の方針に合わせてください。
税理士に相談するときのポイント
相談をスムーズにするため、次を準備しておくと有効です。
- EOR契約書と請求書(対価の内訳がわかるもの)
- どの国の・どんな役務に対する支払いか(役務提供地)
- 支払いが外貨建てか、グループ会社が関与するか
- 自社の課税売上割合(リバースチャージ判定に関係)
よくある質問
EORを使うと、日本企業側の税務処理は不要になりますか?
いいえ。現地の雇用・給与・社会保険・現地での源泉はEORが担いますが、日本企業側には損金算入・消費税・源泉徴収・為替差損益・証憑の保存といった処理が残ります。具体的な取扱いは税理士にご確認ください。
EOR利用料に日本の消費税はかかりますか?
役務は原則「行われた場所」で内外判定し、海外で提供される役務は国外取引として原則 不課税(対象外)です。ただし契約にソフトウェア提供など「事業者向け電気通信利用役務」が含まれる場合はリバースチャージの対象になり得るため、請求書の内訳で確認が必要です。
海外のEOR事業者への支払いで、日本側の源泉徴収は必要ですか?
源泉の要否は「支払者が日本企業かどうか」ではなく、対価の性質と役務の提供地で判定します。役務が国外で行われるEORの対価は、原則として国内源泉所得に該当せず源泉徴収は不要となるのが一般的ですが、使用料や国内で行われた役務に当たる部分があれば対象になり得ます。
EOR利用料や海外人件費は損金に算入できますか?
事業のための費用であれば、原則として損金に算入できます。契約書・請求書などの証憑がそろっていることが前提です。グループ会社が関わる場合は移転価格や寄附金の論点があるため、税理士にご相談ください。
まとめ
EORを使っても、日本企業側には損金・消費税・源泉・為替・証憑という税務会計の論点が残ります。多くは「国外役務は不課税・源泉は対価の性質と提供地で判定」という原則で整理できますが、契約内容や自社の状況で例外があります。
論点を理解したうえで、具体的な処理は税理士に確認するのが安全です。導入の社内説明は社内稟議の通し方、利用料の会計処理はEOR利用料の会計・税務もあわせてご覧ください。
本記事は、国税庁が公開する一般的な情報をもとに、当サイトの編集ポリシーに沿って作成した一般的な解説です。税務上の取扱いは、契約内容・役務提供地・対価の性質・各社の状況により異なり、制度改正もあります。具体的な判断は必ず税理士・所轄税務署にご確認ください。当サイトは本記事の利用により生じた損害について責任を負いません。
主な参照(媒体名・URL)
情報は2026年6月27日時点のものです。

