※この記事は2019年のものです。
・史上最高値をトライするNYダウ(US30)で利益を狙いたい方
・アメリカ経済&トランプ相場の動向を追いかける方
本記事のテーマ
「トランプ大統領 vs パウエル議長」の政策バトルを徹底解明
<スキャル歴12年の専業_億トレーダーがお届けします>
トランプ大統領はパウエルFRB議長の政策運営に対してダイレクトに批判をし続けています。
通常では大統領はFRBの政策運営に意見を述べることは好ましくなく、あくまでFRBは独立した中央銀行という立ち位置で政策運営に集中すべきなのが本来のあり方ですが、トランプ大統領は全く無視してツイッター等で批判を浴びせています。
では実際に何が問題で、両者の言い分がどのように違うのか考えて見たいと思います。
トランプ大統領とパウエル議長の違いとマーケットの反応
トランプ大統領の政策とは?
トランプ大統領の政策で共通しているコンセプトがあります。
それは「自身の支持率、さらに次期大統領選に良い影響を与える政策であること」です。
つまりその政策とは株高・減税・アメリカンファーストなど、国民が喜びそうなものを出し続けるという方針が大統領として就任してからの動きとなります。
これは大統領選挙でのマニュフェストに従った「強いアメリカを作るための政策」とも言えるが、言い方を変えると「明確な実績を作るための政策」とも言えるでしょう。
そのため、アメリカの国民からは成果が目に見えやすく、わかりやすい政策ではあるものの、長期的な視点での政策が出てきておらず、あくまで減税や対外との関税の見直し等近視眼的な政策が多いのが特徴として挙げられます。
現状では国民やマーケットが望む「利下げの必要性」を主張し、パウエル議長にもそれを要求し続けるスタンスを貫いています。
パウエル議長の政策とは?
パウエル議長は就任当初から「マーケットの予想を裏切らない=無難な政策運営を行う」ということで評価され、波風立たせず安定した政策を行うということをマーケットからは期待されていました。
基本的にはイエレン前FRB議長のスタンスを踏襲するということで就任しています。
元々パウエル議長は法律が専門であり、財務次官を務めた人物でもあります。
そのため長期的な視野で物事を落ち着いて考えることができる人ではないかということでマーケットから期待されていました。
パウエル議長の根本にあるのは「将来のリスクを考えて今、何をすべきか?」を考えながら政策運営を行なっていると言えるでしょう。
タカ派でもハト派でもなく、中立派として認識すべき人物です。
現在は景気が悪くないにも関わらず、トランプ大統領が就任して減税策を行なってしまったため、利益の先取りが相場に織り込まれて株高に進んでいることから、その反動のために利上げをしてきた状況です。
順調な経済を維持 vs 無理な緩和策
パウエル議長自体も景気は悪くないと言い続けており、トランプ大統領も望む通りNYダウは上昇を続けています。しかし、その順調なアメリカ経済の中で、トランプ大統領が無理な緩和策を行なってしまうために、これまでの利上げは次の景気の落ち込みに備えたもので、今後の利下げのバッファーを作っていると言えるでしょう。
パウエル議長は、好景気である今のうちに「利上げ」をして将来に備える姿勢を示す
しかし利上げは景気を緩やかにするための政策であり、株安方向に反応しやすくなります。トランプ大統領としては来年の大統領選を控えている中で株安は避けたいため、両者での対立が起きているという状況です。
トランプ大統領は上昇傾向にあるアメリカ経済を「利下げ」によってさらに過熱させようとする
つまりパウエル議長の行う中長期的なスタンスの政策運営を行う中で、トランプ大統領が自分自身の大統領再選のために必死になってパウエル議長を非難している構図と言えます。
政策金利に対するマーケットの反応
トランプのツイッターは戯言?
トランプ大統領によるパウエル議長への非難に対してマーケットはあまり気にしておらず、基本的にツイッターで非難していることから、いつもの戯言のという雰囲気で捉えている様子です。
本気でパウエル議長解任の方向に持ち込もうとした場合は反応する可能性がありますが、現状の「非難」の段階では、株高に持ち込むほどのパワーを持ち合わせていません。
ただし、執念深くFRBに対して「利下げ圧力」を掛け続けて株高を求めるトランプ大統領に、徐々にマーケットの期待が集まっている様子も伺えます。
米中通商協議では「突然のつぶやき」で相場を動かす
中国との通商協議の最中である5月6日にトランプ大統領は「対中関税を引き上げる!」との突然のツイートを行い、その後は中国からの輸入品に対する関税率を現行の10%から25%に引き上げを実施しました。
その直前まで楽観ムードが漂っていた中でのツイートだったこともありマーケットはリスクオフの姿勢へと過敏に反応したものの、関税率引き上げ決定後は「アメリカ経済への好影響」も期待され株価を戻す展開となるも、長期化の様相が出てきたことから株は再度下落する動きとなっています。
この一件からも、有言実行で(アメリカにとっての)正義を振りかざすトランプ大統領への信頼が高まっていると思われ、実際に支持率も上昇しています。
パウエル議長は「FRBは政治的な機関ではない」と発言し、合わせて「短期的な政治の考え方を議論も考慮もしない」と明言していますが、現状ではトランプに押し込まれている印象です。
現在マーケットではFF金利先物で利下げを織り込んでおり、あまりにも利下げを織り込むペースが速いことから、米中が緩和方向に向かった際の巻き戻しのスピードが速くなると想定されるため、ここには注意が必要です。
政策スタンスの違いを意識したトレード
NYダウの上昇期待は高まる
現在トランプ大統領は「大統領再選のために株安にはできない」という大前提の元で動いています。
そこでFRBが仮に利上げを行なったとしても、トランプ大統領がそれを吸収するような政策や政策を期待させるような行動や発言を行えばマーケットが反応することが予想され、株安にはなりにくいと言えるでしょう。
また、今回の米中の貿易摩擦が世界経済減速のキッカケとならないためにも、FRBは世界市場からも利下げを求められることになり、結果としてアメリカの株高要因となります。
なお、貿易摩擦によって既存のトランプ支持層から反感を買うことも起こり得るため、来年の大統領選時の票離れを防ぐための対策や施策を行ってくることも想像されます。
ドル円は中長期目線でのロング(買い)を推奨
大統領選のアノマリーとして大統領選の前年は株高になりやすいということもあるので、利下げも行わず、株安にもならないのであれば、FRBは引き続き利上げ方向で目線を維持するためドル高バイアスはかかりやすいものと言えます。
また、もしも貿易摩擦が激化したとしても、現在アメリカ有利と思われている展開であることから「リスク回避のドル買い円買い」という動きになりやすいため、ドル円はそこまで下落しにくいとも言えるでしょう。
ドル円で両者の政策をトレードに活かすと考えた場合に、ドル高に進みやすいという前提の中、消費増税という円の実質価値が減価するイベントはさらに円安ドル高を後押しすると思われます。
過去消費増税を行なった場合は円安に10円単位で進んでいるというアノマリーがある以上、ドル円はゆっくりロングを持ち続けて、スワップポイントを得ながらの中長期的なトレードは資産運用として考えやすいのではないかと思います。