・スリッページと約定力の関係を知りたい
・優位性の高い取引環境でスキャルピングしたい
本記事のテーマ
FXのスリッページを理解して有利にスキャルピングする
<スキャル歴12年の専業_億トレーダーがお届け>
スリッページとは「指定した額とは違ったレートで約定したこと」を言います。これはFX会社の約定力に左右されるため、意識していないと知らないうちに「不利な為替レート」で発生したコストに当たります。
そこで今回は、FXのスリッページの発生理由や対処方法をまとめて解説します。最後まで読むことで、「スリッページの仕組み」や「有利にスキャルピングするコツ」がわかるでしょう。
スリッページとは
「注文レート」と「約定レート」
FXの売買注文では、「指定した注文レート」と「実際の約定レート」にズレが生じることがあります。このズレ(幅)がスリッページです。FXでは、注文レートと約定レートがズレることを「滑る」と表現し、その幅のことを「スリッページ」といいます。
スリッページは、為替レートが滑った幅のこと!
例えば、米ドル/円が104円70銭のときに、指値で買い注文したとしましょう。このとき、指値にも関わらず、スリッページによって104円72銭(注文レートと約定レートに2pipsの差がある状態)で約定することがあります。
<スリッページの例>
これは注文した時点で、すでに2pipsの損失が発生していることになり、不利な為替レートで取引したことになります。
知らぬ間に発生している無駄なコストとなっていることも!
スリッページ+スプレッド=実質の取引手数料
国内FX会社は手数料を無料としていますが、スリッページは「実質の手数料」に該当します。指定レートで約定されないと、スプレッドに加えてスリッページ分もコストになってしまうのです。
スプレッドが狭い国内FXだがスリッページでのコストが実は大きい
また、通貨ペアごとのスプレッドも実質の手数料になるため、1回の取引ごとに取引コストが発生していることになります。例えば、1万通貨の取引で「注文レートと約定レートに2pipsの差」があった場合で考えてみましょう。
注文した時点で200円(=1万通貨×2pips)の損失からスタートすることになります。さらに、スプレッドが1pipsであれば、+100円(=1万通貨×1pips)が上乗せされます。
スリッページ+スプレッド=実質の取引手数料
変動時はスプレッド以上のスリッページ幅が発生することに注意
これらのコストは「FXの手数料」として考える必要があります。
約定力が高いほど為替レートが滑らない
スリッページと約定力には大きな関係があります。約定力とは、意図したタイミングと価格で、しっかりと約定させる力のことです。
約定力が高いほどスリッページは発生しづらくなりますが、FX会社によって違いがあります。なぜならスリッページの発生具合は「システムの強さ」や「サーバーの処理能力」に影響される、つまり企業の予算によって頻度が変わってくるのです。
例えば、FX会社がシステム面での予算を多く使いサーバーの処理能力が高いと、売買注文をスピーディーに市場へ通すことができます。確実に約定できるほうが、スリッページが発生しづらくなります。
一方で、FX会社がシステムに予算を掛けず、サーバーの処理能力が低いと、売買注文をスピーディーに市場へ通せないため、スリッページが発生しやすくなるのです。
スリッページと約定力の関係
サーバーの処理能力が低い=システムに予算を掛けない会社:スリッページが広い
スリッページは、FX会社側の都合で発生している!
スリッページが発生するその他の理由
急騰・急落による相場変動
急激な相場変動が起こったときは、スリッページが発生しやすくなります。なぜなら、大量の売買注文が短時間(数秒)に集中することで、FX会社が処理しきれないからです。
例えば、1秒間に1pipsの値動きよりも、1秒間に10pips以上も動くときのほうが、スリッページが発生しやすいと感覚的にイメージできるでしょう。
急激な相場変動が発生するタイミング
・為替相場に大きな影響がある速報(ヘッドライン)が入ったとき
・日本時間の早朝など、流動性が低いときのフラッシュクラッシュ
ボラティリティ・流動性が低い
為替相場では、リアルタイムで大量の注文が入るため、「買い」と「売り」が上手くマッチングすれば、トレーダーはスムーズに取引できます。ただし、流動性が低い場合は、スリッページが広がったり、注文が通らなかったりする(約定しない)ケースがあります。
例えば、米ドル/円やユーロ/米ドルなど、普段から流動性が高い通貨ペアであっても、日本時間の早朝のような「市場参加者が少ない時間帯」は、流動性が低くなるので注意しましょう。
流動性が低いと「買い」「売り」が成立しないから
結果的に、スリッページが広がってしまうのか!
逆指値を狙ったストップ狩り
スリッページが発生する理由の中には、国内FX会社が「意図して行うもの」があります。これは、ストップ狩りを狙った値動きにより、国内FX会社が利益を得ようとする行為です。
多くのトレーダーは、リスク管理のために自分で損切りラインを設定するでしょう。この損切りラインは、「逆指値注文」や「ストップ注文」と呼ばれ、多くの損切りラインが集まっている価格帯は、「ストップ狩り」に狙われやすくなります。
それでは、実際のストップ狩りのチャートを見てみましょう。上記のチャートでは、米ドル/円が108円263銭にあるときに、買いのストップ注文が107円791銭のラインに集中しています。
「直近サポートラインは下抜けない」と想定して、逆指値を107円800銭付近に設定しているトレーダーが多くいる状況!
このとき、B-BOOK(国内FX会社)は「為替レートを意図的に操作できる」ため、スプレッドを広げて、ストップ注文のある107円800銭以下で約定させようとするのです。
Bidは107.700/Askは107.800のようにスプレッドが拡大したことで、スリッページも広がってしまうと、トレーダーは損失が発生し、その損失分がFX会社の利益になります。
実際にトレード経験のある方は、「指定レートまで届いてないのに、なぜストップ注文が約定したのか?」と疑問を感じたことがあるのでしょう。
それは、為替レートが操作されたことで、国内FX会社が仕掛けた「ストップ狩り」の被害を受けている可能性があるのです。
また、実はこの為替レートを操作するという仕組みはFX会社ごとの注文処理の方式の違いによって起こっています。注文方式の違いは「DD方式とNDD方式」または「A-BOOKとB-BOOK」と呼ばれ、私たちが知らないところで全く別の注文処理がされています。
注文方式によって変わるスリッページの背景
DD方式(国内FX)の場合
国内FX会社が採用している注文方式は、DD(ディーリングデスク)方式です。DD方式のFX会社は「B-BOOK」と呼ばれ、トレーダーと市場の間にディーラーが入り、FX会社が為替レートを決定してトレーダーに提供する仕組みです。
ディーラーの判断により、トレーダーの注文を直接インターバンクに流すこともできますが、基本的にトレーダーの取引相手はFX会社になります。
DD方式は、一度ディーラー側でトレーダーの注文を約定させます。つまり、その時点で「ユーザーとは反対のポジション」を持つことになるのです。
そのため、トレーダーが利益を出すとFX会社は損失になり、トレーダーが損失を出すとFX会社が利益になるという、利益相反の関係にあります。
この関係性により、DD方式を採用している国内FX会社は、意図的にスリッページを発生させることで、トレーダーにとって不利に(FX会社にとって有利に)なる状況を作り出そうとするのです。
DD方式(国内FX会社)の注意点
NDD方式(海外FX)の場合
一方で、海外FX会社が採用している注文方式は、NDD(ノン・ディーリングデスク)方式です。NDD方式は、トレーダーとインターバンクの間にディーラーを介さない注文方式であり、A-BOOKと呼ばれます。
トレーダーは、FX会社の顧客として売買注文しますが、注文は直接インターバンクに流れて、そのまま約定されます。つまり、トレーダーに提示される為替レートは、インターバンクで決定されるため、FX会社が意図的に為替レートを操作することはできません。
国内FXと海外FXのスリッページの違いとは?
・NDD方式(海外FX)のスリッページは「自然発生的なもの」に限定される
なお、NDD方式はスプレッド分だけがFX会社の利益となるため、必然的にDD方式に比べてスプレッドは広くなります。ただし、その約定力がスキャルピングをする上ではとても重要になります。その理由は下記の記事をご覧ください。
スリッページの対策方法2つ
NDD方式(海外FX)を利用する
NDD方式のFX会社では、注文を約定するときに「人為的な介入」が行われることはありません。すべての注文はディーラーの仲介がなく、機械的に執行されるため、注文から約定までのタイムラグが発生しづらくなります。
さらに、NDD方式を採用している海外FX会社のほうが、圧倒的に約定力が高く、スリッページが発生しづらい取引環境です。そのため、実質の手数料となる「スリッページ」を抑えるためには、海外FX会社を利用することをおすすめします。
スリッページ許容幅を設定する
スリッページを抑えるためには、「スリッページ許容幅」を設定しましょう。スリッページ許容幅を設定すると、指定した以上のスリッページが発生した場合は、注文が約定しなくなります。
約定しない確率は高まりますが、不利な為替レートで約定することを防げるため、結果的に取引コストを抑えられるのです。
スリッページ許容幅は、FXの取引ツールから簡単に設定できる!
スリッページ許容幅をMT4で設定する方法
まずは、MT4の取引画面にログインして、「①ツール」「②オプション」をクリックします。
オプション画面が表示されたら、メニューの「①取引」「②デフォルトを指定」「③許容幅を入力」「④OK」の順に進んだら完了です。許容幅の目安は、0.1pips~0.3pipsほどになります。
各FX会社の取引ツールでも約5分で完了するので、設定しておこう!
スキャルピングで利益を追求しよう
スリッページの手数料は、スキャルピングの天敵です。例えば、毎日の目標獲得pipsが10pipsの場合、注文時点で1~3pipsの取引コストが発生すると、目標達成の難易度が上がってしまいます。
スキャルピングは取引回数が多く、スリッページの影響を受けやすい取引手法です。そのため、「NDD方式の海外FX会社」を利用したり、スリッページ許容幅を厳しく設定したりするなど、事前に取引環境を整えておきましょう。