DD-ダブル同時線ブレイク
こちらでは「スキャルピングの父」と呼ばれる、ボブ・ボルマン氏が提唱する「スキャルピングにおける7つのエントリーポイント(転換点)」をご紹介いたします。
複雑な分析ツールを使う必要はなく、チャートが示すシグナルを観察し、7つの動きを見分けます。ボブ・ボルマン氏のチャート分析法を身につければスキャルピング基礎技術としては十分であると私は考えます。
同時線をきっかけとしたトレンド方向への再ブレイク
ダブル同時線ブレイクとは
マーケットではトレンドが発生した場合、波を描きながら一方向に進んでいきます。その場合はもちろん一直線に進むわけではなく、必ずいったんの値の戻しを試す(トレンドの逆方向に向かう)のですが、この戻しの力が弱まると、ローソク足の実体部分が極端に短くなる同時線が発生しやすくなります。値の戻し終盤でこの同時線が2本以上発生した場合、再度トレンド方向へ推し進める力が強まっていくため、トレンド側へ再ブレイクするのです。
この様なブレイクの事をダブル同時線ブレイクと言います。
そもそも同時線とは始値と終値がほぼ同時の足の事をさします。このような足がチャート上に現れると、買いと売りの圧力がほぼ同量の状態となり、マーケットに決定力がない事を表しています。もしトレンド方向から反転する「値の戻しを試している途中での同時線」であれば、値の戻しの力が弱まってきた事を意味しています。
ダブル同時線ブレイクは、トレンドが継続する場面を狙っていく手法で、トレンド方向から逆行する値の戻しが起きた際、その途中で同時線が2つ以上現れると、その戻しが終盤を迎え、再びトレンド方向に値が動き出す可能性が高まります。このように値の戻しの力が弱まっている状態でトレンド側へ仕掛けていくため、信頼できるエントリーポイントとなるのです。
【ダブル同時線ブレイクの例】
また今回取り上げるダブル同時線ブレイクでは、この同時線について多少の許容範囲を設けており、厳密な同時線に限らず、3pips以下の短いローソク足であれば同時線とみなして、ポジション取りを仕掛けていきます。
つまり、値戻し終盤で発生した同時線、または同時線とみなされる足が発生した場合、それ以上の戻しを推し進める力が減速していることを意味しており、逆に再度トレンド方向へ進む力が高まるため、このタイミングがスキャルピングのエントリーポイントになります。
またダブル同時線ブレイクは、下記のような条件を確認することで、より信頼できるエントリーポイントを抽出することができます。
【条件】同時線からの抜け出しを確認
ダブル同時線ブレイクの条件
同時線は発生したら必ずトレンド方向に値が進むと約束されたものではありません。このため、しっかりとシグナルが確認できてからポジションを取ることが重要です。値の戻しの途中に同時線が数本発生したら、そのローソク足のトレンド側にある足のラインに注目する必要があります。これはシグナル足とも呼ばれ、その後に発生するローソク足がこのラインを抜いた時がエントリーポイントとなります。
上記のチャートの様にダブル同時線ブレイクは視覚的にも大変わかりやすく、エントリーしやすいブレイクポイントです。ただし、注意すべきポイントが複数あるので、こちらを把握するほうが重要になるかもしれません。
【注意1】同時線が2pips以上離れたら見送り
同時線として扱わない動きがある
マーケットでは分かりやすい同時線が毎回発生するわけではなく、ラインが揃っていないケースも多々あります。そこで注意すべき点は、並んでいる同時線の、トレンド側の足のラインが2pips以上離れている場合は、値戻し終盤と判断がつきづらいため、トレードをしてはいけません。強めのトレンドの時であれば、多少は許容範囲として仕掛けていくこともできるかもしれませんが、特に弱いトレンドであった場合は、積極的な仕掛けを控えた方がよいでしょう。
【注意2】抵抗線に出る同時線はもみあう場面も
リスクが高い場面を避ける
また、利益確定までの範囲に明らかな抵抗線がないことも重要です。
ポジション取りを仕掛けようとしたチャートの左側に、狭い範囲でもみ合っている足(クラスター)がある場合、そこにはトレンド進行を妨害する注文が固まっている可能性があります。下記チャートでは「1.2700」のラインが、明らかな抵抗線となっています。特に為替レートの下2桁が00などの切りのよい数字の付近には、大口の投資家も参入してくる傾向があるため注意が必要です。
それでは次のチャートを見ながら、ダブル同時線ブレイクの典型例と注意点を再確認していきましょう。
こちらはユーロ/ドルの70ティックチャートです。
しっかりとした陰線で下落トレンドが発生し、1回目の値の戻しで移動平均線(20EMA)に到達しています。①では足のラインが揃ったキレイな2本の同時線を描きながら、再度トレンド方向にブレイクしており、大変わかりやすいダブル同時線ブレイクのパターンとなっています。
その後②では複数の同時線の安値が、同じラインにローソク足が留まっているシグナルラインを描いており、ここもエントリー可能なタイミングとなります。
そして最後の③については、同時線が発生後にしっかりとした陰線でブレイクしていますが、①や②と比べてみると少しリスクが増えつつあるポイントになってきています。
理由は直近の下落トレンドで下げ進めた価格が全戻しになっており、さらには戻しが発生前にあるトレンド方向の陰線より、戻し中に発生した陽線のローソク足の方がやや長めになっています。
これは、トレンドから反転する力が強くなってきたことを意味しており、ダブル同時線ブレイクのセットアップとしてはリスクが高まりつつある状況です。こういったチャートが織りなす意味を理解し、リスクが高い場面の仕掛けは控えるようにしましょう。
それでは、違うチャートも参考例として見てみましょう。
こちらも①で複数の同時線が発生してから再度上昇トレンド方向にブレイクしています。
ただし今回注目してほしいのは②の方です。①と同様に複数の同時線が発生しており、いかにもブレイクしそうに思えるパターンですが、この時にシグナル足を上抜けしている足はまだありません。結果的に②~③にかけて下落しており、先行して仕掛けていた場合、損切りになっているかもしれません。
不用意にポジションを持つことは、損切りの可能性が高めることに繋がるため、【条件1】で述べたように同時線からの抜け出しを確認してから仕掛けるようにしましょう。
その他にもこのチャートで注意すべき点があります。それは1.27のラインにできているクラスターです。
上記で触れたように、切りのよい数字近辺は大きなレジスタンスラインとなるケースもあります。このチャートでは上抜けをトライして、何本も上髭の長いローソク足が発生しています。結果的に今回は2回目のトライで上抜けしていますが、こういったラインはトレンド進行の妨げとなる可能性があるため、しっかりチェックしておくとよいでしょう。
最後に補足ではありますが、チャートで表示させている移動平均線(20EMA)ですが、値の戻しの強弱を視覚的に認識するのに役立ちますが、移動平均線自体が抵抗線としての効力を発揮しているわけではありません。
もちろん移動平均線を視覚的参考にしているトレーダーはたくさんいると思いますが、マーケットの状況やダブル同時線ブレイクの条件などを考慮せず、単純にトレンド方向から逆行する値の戻しが、移動平均線に到達したことを理由にポジションを取るという戦略は、価格の水準のみでトレードしていることとなり、単なる「値ごろ感」になってしまいます。
現状の価格を考慮するのも大切ですが、マーケットの全体的なトレンドの向きを把握してから、エントリー可能なシグナルを忍耐強く待ち、差益の取りやすい環境のみ仕掛けていくことで、よりトレードのクオリティーを上げることにつながります。
以上のように、ボルマン氏が提唱するように、ダブル同時線ブレイクはトレンドの継続をとらえることができる、有効な手法と言えます。条件さえ理解していれば、すぐに実際のトレードでも活用できるため、しっかりと覚えておくと良いでしょう。
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