世界各国のお金の単位のルーツ

世界各国のお金の単位のルーツ

世界では、実に約180種類のお金が使われており、それぞれ生まれも育ちも違うオリジナルの歴史を持っています。

これから先の経済を考えるためには、まず歴史を知ることが大切で、通貨の歴史は国の特色を色濃く反映している点が多々あります。

今回は、世界中で使われているお金の中でも有名な通貨の歴史を学んでいきましょう。

ドル

世界各国のお金の単位のルーツ/ドル

世界一の発行額を誇る「ドル」の由来は、ヨーロッパのドイツで使われていた銀貨のターラー(ターレル)がなまってダラーになったのが始まりです。

16世紀のはじめ、チェコにある銀鉱山のヨアヒムスタールにちなんだ通貨のターラーが作られると、ヨーロッパ中で流通するようになりました。

ターラーは、ヨーロッパの西端にあるスペインのなまりでドレラと呼ばれ、海を渡ってアメリカに伝わります。

ドレラはアメリカで「Doller(ダラー)」と呼ばれるようになり、1792年に晴れてアメリカの正式通貨となりました。

「ドル」は、当時としては珍しく、作られた時から十進法を採用しているお金でした。日本でも十進法が採用されたのは明治時代になってからなので、当時の通貨としては先進的だったといえます。

十進法とは?

何かを数える時に、0~9までの10個の数字を使う方法。私たちが普段の生活で使う数字は、ほとんど十進法で表されています。

ちなみに、日本では江戸時代に「ドル」の存在は既に伝わっていましたが、Dollarを当時のオランダ語のままドルラルと読み、明治時代に入ってから日本語で「ドル」と呼ぶようになりました。

ユーロ

世界各国のお金の単位のルーツ/ユーロ

ヨーロッパの国々で共通の通貨として扱われる「ユーロ」は、2002年に紙幣が発行された新しい通貨ですが、導入までには様々な歴史がありました。

ヨーロッパでは第二次世界大戦の後から「物価や為替を安定させるためには通貨を統一するべきだ」と考える国が多く、EU(欧州連合)に加盟する国が中心になって共通通貨の完成を目指します。

1999年からは、国をまたいだ銀行間の送金で「ユーロ」が使われるようになり、受け取った側は銀行で「ユーロ」を自国のお金に替えてもらっていました。

日本での手形に近い存在だった「ユーロ」ですが、2002年に紙幣が発行されると、ヨーロッパのほとんどの国が「自国のお金を廃止するので早くユーロに換金するように」と国民に呼びかけます。

換金には期限があり、人々が一気に「ユーロ」への換金に動いた結果、「ユーロ」はドルに次ぐ世界2位の通貨となったのです。

世界各国のお金の単位のルーツ/円

私たちが住む日本のお金「円」は、明治時代の1871年に初めて作られました

江戸時代までは金貨・銀貨・銅貨が、お金の役割をしていましたが、幕末になると全国で藩独自のお金を作る流れが強まり、外国のお金が大量に流れ込むこともあって経済が混乱していました。

新しい時代を迎えた明治政府は、混乱を解消するために「日本全国で使うお金を統一すべきだ」と考え、円・銭・厘の3つの単位でお金を統一します。

それまでに日本で使われていた「両」や流れ込んでいたアメリカの「ドル」との交換は、とてもシンプルに「1円=1両=1ドル」とされ、国民が共通のお金を使うルールにしたことで経済の混乱は丸く収まったのです。

ちなみに、「円」という名前の由来は、「当時つくられた硬貨の形が円形だったから」というシンプル説が最も有力です。今は当たり前のデザインも、当時は斬新だったのかもしれません。

ポンド

世界各国のお金の単位のルーツ/ポンド

英国の通貨である「ポンド」は、8世紀に初めて作られた長い歴史を持ちます。もともとは「1ポンド=453グラム」という重さを測るための単位でしたが、そのままお金の単位としても使われました。

「ポンド」という名前は、ラテン語で天秤を意味する「リーブラ」が語源となって「リブラポンド」と呼ばれているほか、純度の高い銀貨だったことになぞらえて「スターリング・ポンド」という名前も持っています。

あまり知られていませんが、第二次世界大戦後にアメリカが世界の実権を握るまでは、「ポンド」は世界で一番の決済通貨として活躍していました。

イギリスはもともと、高い造船技術や航海術を持っていたので、船旅に出て新たに土地を開発するのがとても上手でした。開拓した土地で「ポンド」がお金として使われ、だんだん広まる中で自然と世界のお金のリーダーに選ばれたようです。

カナダドル

世界各国のお金の単位のルーツ/カナダドル

カナダの主要通貨である「カナダドル」は、国自体がイギリスに開拓された植民地だったため、もともとは「カナダポンド」という名前の通貨でした。

しかし、海を挟んだイギリスよりも隣国のアメリカの方が交易量も多く、「自国のお金はドルと交換しやすい方が便利」とのことから、名称を「カナダドル」に変更します。

いくつもの国が集まった連邦国だったカナダでは、1860年代には5種類もの通貨が流通していましたが、少しずつ統合が進み、1896年からは国の通貨が「カナダドル」に統一されました。

「カナダドル」は、戦後の固定相場時には、アメリカドルとの交換レートが「1:1」で設定されていた珍しい通貨でした。変動相場制への移行後も、他の通貨に比べて値動きが小さく、安定を好む投資家からは人気の通貨となりました。

スイスフラン

世界各国のお金の単位のルーツ/スイスフラン

「スイスフラン」は、19世紀に作られたお金で、「その価値は安定資産の金(ゴールド)よりも手堅い」と呼ばれる世界有数の通貨です。

スイスはいくつもの州から成り立つ連邦国で、もともとはそれぞれの州が別々の通貨を使っていました。

しかし、経済を成長させるためにお金を統一するべきと考えた国は、1850年に当時のフランスの通貨の「フラン」になぞり、「スイスフラン」の名前でお金を作ります。

他の国と争わない永世中立国に認定されているスイスは、戦争などが起こって通貨の価値が下がるリスクがありません。なので、「スイスフラン」は、投資対象としての根強い人気を持っています。

一方、ユーロとの交換レート上限を撤廃した2015年のスイスフラン・ショックでは、「スイスフラン」の急騰で世界中の株式市場がパニックになったこともあるため、世界的に見ても影響力が強い通貨といえるでしょう。