株式や債券、証券会社など、誰でも一度は耳にしたことがある言葉ですが、分かるようで分からない人も多いはずです。
今回は、「なぜ株式や債券が生まれたのか?」「証券会社の役割は何なのか?」など、証券ビジネスの歴史を1つずつ学んでいきましょう。
株式会社の始まり
1602年、世界で最初の株式会社「東インド株式会社」が、オランダで設立されました。
この頃のヨーロッパは、大航海時代と呼ばれ、探検家たちがこぞって海にくり出していた時代です。
探検家たちは、インドや東南アジアへの航旅で得た胡椒や香辛料をヨーロッパへ持ち帰り、売りさばくことで巨額の富を得ました。しかし、難破や海賊からの襲撃などで船旅のリスクは高く、成功率は20%に満たなかったそうです。
当時のお金持ちは、稼ぎたいけどリスクを取りたくないので、出資者として船の準備や船員への報酬をサポートし、儲け分をひとりじめする立場でした。しかし、船旅は成功率が低いハイリスクの投資だったので、そのうち出資する人も減っていきます。
困った探検家たちは、複数のお金持ちから小分けにお金を出資してもらい、航海に成功して儲けが出たら出資者に分配することを考えつきました。
出資者には、資金を預けた証拠に株式という証書を発行し、証書の枚数に応じて儲けが分配されていたので、まさに現在の株式会社の仕組みがこの時代すでに確立されていたのです。
債券の成り立ち
債券とは、お金を集めたい国や企業とお金を運用したい投資家が「期日までに利子を付けてお金を返すこと」を約束したものです。
制度の始まりは17世紀の終わり、革命によって国の主権が王様から国民を代表する議会に移ったイギリスでした。
当時はお金の多さで戦争の勝敗が分かれやすい時代で、フランスとの戦争でお金に困っていたイギリスは、大きな企業からお金を借り、国民からの税収入で返済する「国債制度」をつくります。
利息の受け取りで儲かると思った企業も最初は喜んでお金を貸しましたが、国は利息支払いのために次々と新しい税制度をつくったので景気の悪化を招きました。
やがて会社はお金を貸し渋るようになり、困った国はお金を集めやすいように換金や利息のルールを固定して、一般の投資家にも国債を発行してお金を集めます。
債券は踏み倒されるリスクが少なく、多くの投資家にとって魅力的な商品なので、次第に大企業も発行するようになり、今では国債のほかに企業債という名でも債券が発行されています。
証券取引所と証券会社の誕生
世界で最も古い証券取引所の「アムステルダム証券取引所」は、世界初の株式会社である東インド株式会社の設立と同時期に株式の売買をするためにオランダでつくられました。
株式は、出資先の会社でトラブルがあっても買い手(出資者)の責任は出資額までに限定される「有限責任」だったので、安心感を持った買い手たちは証券取引所で活発に株式を売買します。
ちなみに、アメリカやイギリスの証券取引所は、人々がたまり場にしていたコーヒーショップで非公式に株式の売買がされていたのが発展し、現在のニューヨーク証券取引所やロンドン証券取引所になったそうです。
ヨーロッパに株式会社が増えてきた頃、お金を集めたい会社と良い投資商品を買いたい投資家の仲介役として「証券会社」が誕生しました。
お金のプロである証券会社は、最初は株式の売買だけを仕事にしていましたが、次第に国債や企業債も扱ってどんどん金融市場で成長し、現代では投資商品の発明やお客の資産管理サポートまで幅広く業務を広げ、金融市場の歯車として活躍しています。
今日の証券ビジネス
株式の誕生から400年以上が経ち、世界中の株式発行総額は117兆ドルにまでなりました。
私たちが生きている現代は、インターネットやスマートフォンが普及し、かつてないスピードで世界中の情報が出回る時代です。
時代を生き抜くために証券会社は国内だけでなく、海外の会社とも時には手を取り合い、また競い合いながらさらなる成長を目指しています。
最近はテレビやニュースで「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉をよく目にするようになりました。海外だけでなく、日本でもSDGsのためになる債券を扱い、お金だけでなく社会貢献や環境保全に関わる証券会社が増えています。
証券会社のように専門分野以外にも広くアンテナを張り、思いついたことを実行するのは簡単ではありません。しかし、難しいことに一生懸命取り組めば自分自身が成長し、明るい未来への兆しとなってくれるでしょう。