若者の政治参加で変わる日本(前編)

若者の政治参加で変わる日本(前編)

私たちの生活に深く関わる政治。特に若い世代の政治参加は、将来の社会を左右する重要な要素です。しかし現在、日本の若者世代(30歳未満)の政治参加は年々減少を続けています。

2021年時点で若者世代は有権者人口の13.4%まで減少し、2022年7月の参議院選挙での投票率も34.2%と、全体平均の52.1%を大きく下回りました。この状況は、これからの日本社会にどのような影響を与えるのでしょうか。

各国との比較から見る日本の政治

各国との比較から見る日本の政治

まずは、各国の最新の国政選挙における若者層の投票率を見てみましょう。

国名若者層の投票率
スウェーデン82.0%
デンマーク77.0%
アメリカ42.0%
韓国72.5%
日本36.5%
出典:TBS NEWS DIG「二階元幹事長「不出馬」で考える スウェーデン82%、日本36.5% これが日本の“おじさん政治”を生む【報道1930】
出典:Yahoo!ニュース「投票率84%は低い?日本からは想像できぬデンマーク選挙 若者の高い参加率を探る」
出典:statista「Voter turnout in presidential elections in South Korea from 1992 to 2022, by age group」
出典:CIRCLE「The Youth Vote in 2024」

この数字から、日本の若者の政治参加には深刻な課題があることがわかります。北欧諸国では80%前後と高い投票率を維持している一方で、日本は36.5%と低水準にとどまっています。

それでは、具体的な課題を見ていきましょう。

利便性の低い投票システム

韓国では若者向けにSNSを活用した選挙活動を展開し、70%を超える投票率を達成しています。一方、日本では不在者投票の手続きが煩雑で、デジタル化も進んでいない状況です。

政治教育の不足

スウェーデンでは小学校6年生から政治参加に関する教育が組み込まれており、自分の意見を主張する機会が豊富にあります。日本では主権者教育が不十分で、多くの若者が政治を身近に感じられていません。

政治意識の低さ

日本の若者の約40%が「投票しても政治は変わらない」と考えています。一方、スウェーデンやデンマークでは、若者の意見が実際の政策に反映される機会が多く設けられており、政治参加への実感が得られやすい環境が整っています。

日本の政治における課題と現状

日本の政治における課題と現状

若者の政治離れ

2021年の参議院選挙における年代別投票率を見てみましょう。

年代投票率
10代43.23%
20代36.50%
30代47.13%
40代55.56%
50代62.96%
60代71.38%
出典:総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」

この数字からわかるように、若い世代と高齢者の間には20~30ポイント程度の差があります。これは政策決定における世代間の影響力の大きな違いを表しているといえるでしょう。

NO YOUTH NO JAPANと日本総合研究所の調査によると、若者の政治参加を妨げる主な要因には以下のようなものがあります。

  • 政治や選挙に関する知識不足による自信のなさ
  • 不在者投票の手続きの煩雑さ
  • 投票所へのアクセスの困難さ
  • 政治への無関心や諦めの気持ち

政治の構造的な課題

特に気がかりなのは「自分の一票では何も変わらない」という諦めの気持ちが若者の間に広がっていることではないでしょうか。この政治的な効力感の低下が、投票への意欲を下げる大きな要因となっています。

また、年金制度や税制改革といった重要な政策が専門的でわかりにくいことも、若者の政治離れを加速させる原因です。

若者の政治参加を促進するための改善策

若者の政治参加を促進するための改善策

デジタル技術の活用

若者の政治参加を促すには、デジタル技術の活用が鍵となります。インターネット投票の導入や、不在者投票手続きのオンライン化など、日常的に使用するデジタル技術を活用した投票システムを導入していかなければなりません。

SNSを活用した政治情報の発信も注目を集めています。一方的な情報提供ではなく、若者が気軽に政治について議論できる場を提供することで、政治への関心を高める試みがはじまっています。

教育現場での施策と投票環境の整備

世界の成功事例から学んだ、具体的な施策を紹介します。

教育現場での取り組み

  • 模擬選挙の定期的な実施
  • 政治家との対話セッション
  • 政策立案ワークショップ
  • SNSを活用した政治教育

投票環境の整備

  • 大学内投票所の設置
  • モバイル投票所の導入
  • 電子投票システムの開発
  • 投票所までの無料シャトルバス運行

これらの施策は、単独で実施するのではなく、組み合わせて相乗効果を生み出さなければなりません。例えば、模擬選挙と政治家との対話セッションを組み合わせることで、より実践的な政治教育が可能になります。

また、大学内投票所の設置と電子投票システムを併用することで、若者の投票アクセスを大きく改善できる可能性が高まるでしょう。

まとめ

若者の政治参加は、民主主義の発展と世代間の公平性を確保する上で欠かせません。日本の現状には課題が多いものの、外国の成功例や新しいデジタル技術の活用など、改善に向けた可能性も広がっています。

特に重要なのは、若者自身が政治参加の意義を実感できる機会を増やすことではないでしょうか。教育現場での実践的な取り組みや、デジタル技術を活用した新しい参加の形を通じて、若者の政治参加を進めていかなければなりません。

後編では、これらの課題に対する具体的な解決策や将来に向けた展望、高齢者主導の社会を防ぐための施策について詳しく見ていきます。