物価高なのに給料が上がらない?インフレ時代の給与交渉の方法

給与交渉のタイミングと準備

スーパーで買い物をするたびに「また値上がりしてる…」と感じることはありませんか?食品や日用品、電気代など、あらゆるものの価格が上昇しています。一方で、給料明細を見ても「そんなに増えていない」と感じる人が多いのではないでしょうか。

実は、日本では名目上の給料は少し上がっていても、物価上昇を考慮した「実質賃金」は下がり続けているという矛盾が起きています。この状況で私たちはどうすればいいのでしょうか。今回は、インフレ時代に自分の収入を守り、増やすための給与交渉や転職について、若い世代のみなさんにも分かりやすく解説します。

給料は上がっても実質賃金は下がっている矛盾

実質賃金とは

「実質賃金」とは、物価の変動を考慮した賃金のことです。例えば、給料が月1万円上がったとしても、物価が2万円分上がっていれば、実際の購買力は下がってしまいます。これが今の日本で起きている現象です。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年11月分結果確報」によると、2025年11月の実質賃金は前年同月比で2.8%減となり、11カ月連続でマイナスを記録しています。つまり、「給料は上がったけど、生活は楽にならない」という状況が数字でも証明されているのです。

物価上昇の実態

総務省統計局が発表した消費者物価指数(CPI)を見ると、2025年12月時点で前年同月比2.1%の上昇となっています。下のグラフは消費者物価指数の推移を示したものです。

消費者物価指数のグラフ
出典:総務省「2020年基準 消費者物価指数」

2020年を基準(100)とすると、2025年12月には113ポイントまで上昇しており、物価が着実に上がり続けていることが分かります。

なぜ日本では給与交渉が難しいのか?

欧米では転職時や評価面談の際に給与交渉をするのが当たり前ですが、日本では「お金の話をするのは図々しい」「会社が決めることに口を出すべきではない」という空気があります。この文化的背景が、給与交渉のハードルを高くしています。

日本企業の多くは、給与テーブル(※勤続年数や役職に応じて給料が決まる仕組み)が固定されており、個人の交渉で大きく変えることが難しい構造になっています。

ただし、近年は状況が変わりつつあります。経団連の調査によると、2025年の春季労使交渉では大手企業の賃上げ率が5.39%と、2年連続で5%台を記録しました。これは1991年以来33年ぶりの高水準です。

近年の賃上げ動向
  • 2024年:賃上げ率5.17%
  • 2025年:賃上げ率5.39%(大手企業)

    ※中小企業でも約5%近い賃上げを実施

しかし、この賃上げでも物価上昇に追いついていないのが現実です。だからこそ、個人レベルでの給与交渉や転職が重要になってきます。

自分の適正年収を知る方法

給与交渉をする前に、まず自分の市場価値を知ることが重要です。国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査結果について」によると、日本の給与所得者1人あたりの平均年収は約460万円となっています。以下は、年代別の平均年収です。

年齢全体男性女性
20〜24歳267万円279万円253万円
25〜29歳394万円429万円353万円
30〜34歳431万円492万円345万円
35〜39歳466万円556万円336万円
40〜44歳501万円612万円343万円

※出典:国税庁「令和5年分民間給与実態統計調査結果について」

以下のような転職サイトの年収診断ツールを使えば、自分のスキルや経験に基づいた適正年収の目安が分かります。

  • doda年収査定:職種・年齢・スキルを入力すると、市場価値が診断できる
  • ミイダス:経歴を登録すると、企業からのオファー想定年収が表示される
  • OpenWork(旧Vorkers):同じ業界・職種の人の年収データが閲覧できる

同業他社の求人をチェックすることで、今の自分の給料が相場より低いのか高いのかが見えてきます。これは交渉の際の重要な根拠になります。

社内での給与交渉は準備とタイミングが9割

給与交渉はいつ行うかが非常に重要で、具体的には以下のタイミングが効果的です。

給与交渉のタイミング
  • 人事評価面談の時期
  • 大きなプロジェクトを成功させた直後
  • 業務範囲や責任が増えたタイミング
  • 会社の業績が好調な時期

そして、給与交渉の際は感情論ではなく、客観的なデータに基づいて交渉することが成功の鍵です。準備すべき資料を、以下のとおりまとめました。

準備すべき資料
  • 自分の業績や成果を数値化したもの(売上貢献額、コスト削減額など)
  • 同業他社や市場の給与相場データ
  • 自分が担当している業務の範囲と責任の変化
  • 取得した資格やスキルアップの実績

給与交渉の際は、「給料を上げてください」ではなく、「これだけの成果を出しているので、市場価値に見合った評価をお願いしたい」という姿勢が大切です。また、上司との信頼関係を壊さないよう、感謝の気持ちも忘れずに伝えましょう。

転職による年収アップとリスク

転職で年収が上がる可能性

転職による年収アップは、もはや珍しいことではありません。

パーソルキャリア株式会社が運営する「duda」の「2024年度版 決定年収レポート」によると、2024年度に転職した人の59.3%が年収増加を実現しており、これは過去6年間で最高の数字です。また、パーソルキャリア株式会社が運営する調査機関「Job総研」が2025年12月に実施アンケートでは、転職によって年収が上がったと回答した人の割合は62.2%に達しています。つまり、10人に6人は転職で収入を増やしているのです。

転職による年収アップの相場は、前職プラス10%程度とされています。日本の平均年収約480万円の場合、転職後は48万円アップの528万円が目安となります。2026年の転職市場は、21業界中20業界で採用が活況または横ばいと予測されており、転職のチャンスは広がっています。特に20代の転職率は12.0%と最も高く、若いうちに市場価値を高める動きが活発です。

転職のリスク

一方で、転職には以下のようなリスクもあります。

  • 新しい環境に適応できない可能性
  • 試用期間中の評価リスク
  • 退職金や年金の積み立て期間がリセットされる
  • 人間関係を一から構築する必要がある

年収だけでなく、働きやすさやキャリアの将来性も含めて総合的に判断することが重要です。

まとめ

物価が上がり続ける今、会社が給料を上げてくれるのを待つだけでは、生活はどんどん苦しくなってしまいます。大切なのは、自分の市場価値を正しく知り、それに見合った対価を得るために行動することです。社内での給与交渉も、転職による年収アップも、どちらも自分の価値を正しく伝えるという点では同じです。

まずは転職サイトの年収診断や求人チェックから始めて、自分の立ち位置を確認してみましょう。そして、適切なタイミングで、データに基づいた交渉をする。その一歩が、インフレ時代を生き抜く力になります。