「若者は政治に無関心」というフレーズをよく耳にしますが、本当にそうでしょうか。たしかに投票率の数字だけを見れば、若年層の政治参加は低く映ります。しかし、最近の「財務省解体デモ」には多くの若者が参加し、SNS上でも政治的な議論が活発に行われています。
実は若者たちは政治に無関心なのではなく、従来の政治参加の形とは異なる方法で声を上げ始めているのです。投票という従来の政治参加だけでなく、SNSでの発信や署名活動、消費行動を通じた意思表示など、多様な形で社会に影響を与えることが可能になっています。今回は、投票以外にも政治や社会を変える方法があることを、具体的な事例とともに考えていきましょう。
若者の政治への関心

若者の投票率の低さは長年指摘されてきた問題です。総務省の統計によれば、20代の投票率は他の年代と比較して10〜20%ほど低い傾向にあります。2021年の衆議院選挙では20代の投票率は36.50%と、全体平均の55.93%を大きく下回りました。

しかし、投票率の低さが政治的無関心と直結するわけではありません。実際、内閣府の「社会意識に関する世論調査」によれば、政治に「関心がある」と答えた18〜29歳の割合は年々増加傾向にあります。
政治参加の形は多様化しており、特に注目すべきは「財務省解体デモ」のような直接的な抗議活動への若者の参加です。このデモは、財政政策や増税に対する不満から発生したものですが、参加者の多くが若年層だったことは、彼らが政治的課題に対して無関心ではないことを示しています。
SNSが変える政治参加の形

現代の若者にとってSNSは単なるコミュニケーションツールではなく、政治参加の手段の1つとなっています。具体的には以下のような活動が挙げられます。
- ハッシュタグ運動:特定の政策や問題に対して意見を表明
- オンライン署名活動:「Change.org」や「Avaaz」などのプラットフォームを通じた署名集め
- 情報拡散:政治的な問題や不正に関する情報を広く共有
たとえば、2019年に起きた「#KuToo運動」は、職場での女性のハイヒール強制に反対するTwitter上のハッシュタグからはじまり、1万8千人以上の署名を集め、厚生労働省への請願にまで発展しました。
このように、SNSを活用した政治参加は従来の政治参加よりも敷居が低く、若者が自分の意見を表明しやすい特徴があります。また、拡散力の高さから短期間で大きな影響力を持つこともあります。
消費行動を通じた政治への参加

もう1つの政治参加の形が、消費行動を通じた意思表示です。これは「財布による投票」とも呼ばれ、以下のような形で実践されています。
- 特定企業の製品・サービスの不買運動
- 倫理的消費(エシカル消費)の実践
- クラウドファンディングを通じた社会的プロジェクトへの支援
※倫理的消費(エシカル消費)とは、環境や社会、人権などに配慮した商品やサービスを選んで購入することで、消費行動を通じて社会課題の解決に貢献する消費スタイルです。
日本でも2019年に韓国製品の不買運動が起きたり、環境問題への意識の高まりからプラスチック製品を避ける消費者が増えたりしています。
特に注目すべき事例としては、2020年のアメリカで起きた「Stop Hate for Profit」キャンペーンがあります。これはFacebookのヘイトスピーチ対策の不十分さに抗議するため、多くの企業が広告出稿を一時停止したもので、結果としてFacebookの株価下落と政策変更につながりました。
このような消費行動を通じた政治参加は企業活動に直接影響を与えられるため、効果が見えやすいという特徴があります。若者にとっても日常の消費選択を通じて社会に影響を与えられることは、政治参加への新たな入り口となっています。
地域活動とボランティアでの政治参加

見落とされがちですが、地域活動やボランティアも政治参加の1つの形です。地域の課題解決に直接関わることで、政策の実効性や問題点を肌で感じられます。
たとえば、2011年の東日本大震災以降、若者のボランティア参加率は上昇傾向にあります。また、日本財団の調査によれば、全国の学生の約4割が今後のボランティア活動への参加を希望していると回答しています。

地域活動やボランティアを通じた政治参加の特徴は、以下の点にあります。
- 具体的な成果が目に見えやすい
- 地域コミュニティとのつながりが生まれる
- 政策の実態や課題を直接体験できる
このような活動は、将来的な投票行動にも影響を与える可能性があります。実際に社会問題に関わることで、政治的な関心や知識が高まり、より主体的な政治参加につながるのです。
まとめ
投票は民主主義の基本ですが、それだけが政治参加の形ではありません。SNSでの発信や署名活動、消費行動、地域活動など、日常のさまざまな場面で私たちは政治に参加することができます。特に若い世代にとって、これらの新しい政治参加の形は、自分の声を社会に届ける重要な手段ではないでしょうか。
「財務省解体デモ」に多くの若者が参加したように、若者は決して政治に無関心なのではなく、自分たちの関心や価値観に合った形で政治に関わろうとしています。投票率を上げる取り組みは続けなければなりませんが、同時に多様な政治参加の形を認め、促進していくことも大切です。民主主義は投票所だけでなく、日々の生活の中で実践されるものといえるでしょう。