世界的には利下げを進める中で、日本は逆にゼロ金利を解除し金利の上昇を模索しています。
ただし、日本には簡単に金利を上げることができない、日本特有の問題を抱えています。この問題は、日本の財政赤字の根本的な課題とも言えます。
巨額の国債発行と利払い負担
2024年時点で、日本の公的債務(国の借金)の総額は、3月末の時点で1297兆円に達しており、これは日本のGDP(国内総生産)の約2.4倍に相当します。
この日本の公的債務の大部分を占めるのが国債で、その比率は非常に高く、約90%を占めています。
これだけの巨額の国債が発行されている背景には、長年にわたる財政赤字と、社会保障費や公共事業費の増加があります。政府はこれらの支出をまかなうために、毎年多額の国債を発行して資金を調達しています。しかし、この膨大な国債残高が金利のコントロールを難しくさせています。
まず、金利が1%上昇すると、政府の利払い費用が年間約10兆円増加することになります。2024年の一般会計予算(日本の予算)が113兆円なので、相当な負担増と言えます。
このような状況では、政府は金利引き上げに慎重にならざるを得ません。急激な金利上昇が国債の利払い負担を増大させ、財政をさらに悪化させるリスクがあるためです。
財政赤字の拡大と悪循環
日本政府が国債を発行し続ける理由は財政赤字の補填です。日本での財政赤字は毎年約30兆円を計上しており、この赤字を埋めるために発行した国債は、2023年度で約36兆円と過去最高水準の額となります。
赤字を埋めるために発行していた国債ですが、金利が上昇した場合には「財政赤字を増やす要因」となってしまいます。しかし、急激な経済成長が見込めず、増税や歳出削減が難しい現在の日本では、「国債発行が最も現実的な赤字補填の施策」となるのです。
金利が上昇した場合は、「保有する国債が赤字を増やし、その赤字を埋めるために国債を発行する」という悪循環に陥る危険性があります。
さらに、金利上昇が経済に与える影響も無視できません。企業の借入コストが増加し、投資が抑制されることで、経済成長が鈍化する可能性があります。
そうなると、賃金が減ったり雇用自体が減ることも想定され、物価上昇を目標とする政府の理想とは真逆の世界となってしまいます。
金融市場の安定性と金融機関への影響
日本にとって最大の財政問題である国債の残高は約1000兆円となりますが、そのうちの半分(約500兆円)の国債は日本の金融機関が保有しています。
これらの国債は、金融機関にとって安全な資産とされていますが、金利が上昇すると国債の価格が下落し、金融機関の保有資産の価値が減少するリスクがあります。
仮に金利が0.25%上昇した場合でも、国債価格の下落により、金融機関のバランスシートが大きく悪化する可能性があります。
特に、日本の金融システムは国債に強く依存しているため、国債価格の急激な変動が市場全体に波及するリスクがあります。このような事態が発生すると、金融機関の健全性が損なわれ、最悪の場合、金融市場全体の安定性が脅かされる可能性があります。
このため、日本政府と日本銀行は金利を慎重に管理し、金融市場の安定を維持することを最優先にしています。
まとめ
このように、日本が金利を上げられない背景には、巨額の国債発行、財政赤字の拡大リスク、そして金融市場の安定性確保という複数の要因が絡み合っています。
金利を動かすことで為替などへの影響も大きい上に、このような課題を抱える日本政府は、金利政策に対して慎重な姿勢を取らざるを得ない状況です。