世界の若者の5人に1人が「ニート(NEET)」状態であることをご存知でしょうか。2023年の時点で、世界の15〜24歳の若者の21.7%が教育も就業も職業訓練も受けていない状況にあるのです。
この数字は2020年のパンデミック時の23.8%からは改善したものの、2015年の21.8%とほぼ同水準で、深刻な社会問題となっています。特に注目すべきは、経済発展の度合いや文化の背景によって、その特徴や課題が世界各地で大きく異なることです。
世界各国のニート率

世界のニート率は地域によって大きな格差が存在します。最も深刻な状況を示している地域は、以下のとおりです。
- アラブ諸国:33.2%
- 北アフリカ:31.2%
- 南アジア:25%
- サハラ以南アフリカ:20%
これらの地域では、軟弱な経済基盤や教育システム、そして社会的なインフラの未整備が、高いニート率の主な要因となっています。特に、デジタル化の遅れや技術革新への対応の遅れが、若者の就業機会を制限している側面があるといえるでしょう。
一方で、以下のとおり日本のニート率は際立って低く、2023年時点で2.4%と世界で最も低い水準を維持しています。

ただし、日本の場合は15歳~34歳を対象としており、家事をしていない、学校に通っていない、職業訓練を受けていないという独自の定義を採用している点に注意が必要です。この定義の違いは、ほかの国と比較する際に考慮しなければなりません。
ニート問題の要因

ニートの問題で特に顕著なのは、ジェンダーによる格差です。世界的に見ると若い女性のニート率は28.1%で、男性の13.1%の2倍以上に達しています。
この差は特に南アジアで顕著で、若い女性の約半数がニート状態にある一方、男性は12.3%にとどまっているのです。この格差の背景には、以下のような要因が存在しています。
- 教育機会の不平等
- 早期結婚や伝統的な性別役割分担
- 労働市場における性差別
- 育児・介護負担の偏り
教育レベルもニート率に大きな影響を与えています。EUの調査によると、教育レベルが高いほどニート率が低下する傾向が明確に示されているのです。
低学歴層では12.9%、中学歴層で11.6%、高学歴層では7.8%となっています。この結果は、教育が若者の就業機会を広げ、社会参加を促進する重要な要素であることを示しているといえるでしょう。
ニート問題の解決に向けた取り組み

EUの取り組み
世界各国でニート問題の解決に向けた、新たな取り組みが進められています。EUでは「Youth Guarantee」という施策を実施し、30歳未満の若者に対して、就職や教育、職業訓練の機会を4ヶ月以内に提供することを保証。
この取り組みは若者の社会的排除を防ぎ、労働市場へのスムーズな参入を支援する重要な役割を果たしているといえるでしょう。さらに、デジタルスキルの習得支援や起業家育成プログラムなど、現代の労働市場のニーズに応じた支援も積極的に行われています。
特に注目すべき取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。
- オンライン学習プラットフォームの無償提供
- スタートアップ支援プログラムの拡充
- メンターシップ制度の導入
- 職業訓練のデジタル化
日本の取り組み
日本では若者サポートステーションやジョブカフェなど、きめ細かな支援体制が整備されています。
若者サポートステーションでは15〜39歳を対象とした就労支援を行い、個別カウンセリングや職業適性診断、就職活動支援など、包括的なサービスを提供。ジョブカフェでは、カウンセリングから職業紹介まで一貫したサービスを提供し、若者の就職活動をサポートしています。
近年では企業側の取り組みも活発化しており、インターンシップの拡充や職業訓練プログラムの提供、柔軟な働き方の導入など、若者が働きやすい環境づくりが進められています。また、リモートワークの普及により、地理的な制約が緩和され、就業機会が拡大していることも注目すべき点です。
まとめ
世界的なニート問題の解決には、教育機会の拡充や就労支援の強化、そしてジェンダー格差の解消が不可欠です。日本は世界で最も低いニート率を維持していますが、これは恵まれた環境であると同時に、私たちがその環境を活かして自己実現を目指す責任も背負っているといえるでしょう。
若者一人ひとりが与えられた機会を最大限に活用し、自らの将来を切り開いていくことが求められています。また、社会全体としては若者の潜在能力を引き出し、活躍できる場を創出していく努力を継続しなければなりません。
特にデジタル化が進む現代社会においては、技術革新に対応できる柔軟な教育システムと、多様な働き方を受け入れる労働市場の整備が今後ますます重要になってくるでしょう。