年収1,000万円は多くの人にとって憧れの収入レベルです。しかし、この年収を得ている人々の実際の労働時間や生活実態はどのようなものなのでしょうか。
本コラムでは、年収1,000万円の人々の時給を計算し、その労働環境や生活の質について考察していきます。
高収入の裏側にある現実を理解することで、私たちのキャリアプランや働き方について新たな視点を得られるかもしれません。
年収1,000万円を時給で計算したら?
まず、年収1,000万円の人の時給を計算してみましょう。時給を算出するには、年間の労働時間を知る必要があります。
経団連が公表した2020年労働時間等実態調査によると、パートタイム労働者を除く一般労働者の2019年年間平均労働時間は約2,000時間です。
出典:一般社団法人 日本経済団体連合会「2020年 労働時間等実態調査」
この数字を基に計算すると、
1,000万円 ÷ 2,000時間 = 5,000円/1時間
となります。つまり、単純計算では年収1,000万円の人の時給は5,000円ということに。
しかし、実際には高収入の人ほど残業時間が長い傾向にあります。カネとホンネの調査によると、年収1,000万円以上の人の月間平均残業時間は29.4時間となり、年間に換算すると約353時間の残業です。
この残業時間を考慮して再計算すると
1,000万円 ÷ (2,000時間 + 353時間) = 4,253円/1時間
となり、時給は約4,200円まで下がるでしょう。
さらに、国税庁の「令和2年民間給与実態統計調査」によると、給与所得者で年収1,000万円を超える人の割合は約4.7%です。つまり、20人に1人程度しかいない、かなり稀有な存在だということがわかります。
高収入者の人にとって「最適なワークライフバランス」
高収入を得るためには、それなりの労働時間と責任が伴います。
社員クチコミサイトVorkers(現OpenWork)の調査によると、年収1,000万円以上の層の月間平均残業時間は50時間を超えているというデータも。
これは、1日あたり2時間以上の残業を毎日行っている計算になります。さらに、休日出勤や深夜残業なども考慮すると、実質的な労働時間はさらに長くなる可能性があるでしょう。
高収入を得ることは魅力的ですが、同時に生活の質も考慮する必要があるといえます。長時間労働によってプライベートの時間が削られ、健康を害するリスクも高まります。
以下の図表は、年収と幸福度の関係を示したものです。
この図表から、年収が上がるにつれて幸福度も上昇する傾向が見られますが、ある程度の年収を超えると幸福度の上昇が緩やかになることがわかります。つまり、お金だけでは得られない幸福感があるということです。
また、高収入者の生活実態を見ると、必ずしも余裕のある生活を送っているわけではありません。
高額な住宅ローンや教育費、さらには社会的地位に見合った生活水準を維持するための支出など、収入が増えるにつれて支出も増加する傾向があります。このため、実質的な可処分所得は思ったほど増えていない場合もあるといえるでしょう。
収入が上がったことで生活コストも上げてしまい、ワークライフバランスを欠いた働き方になってしまう点にも注意が必要です。
「時給を上げるスキル」が年収を引き上げる
同じ年収でも、働き方によって時給は大きく変わります。時給を上げるためには、以下のような方法が考えられます。
- 業務効率の向上:タスク管理ツールの活用や、集中力を高める作業環境の整備など
- スキルアップによる付加価値の向上:専門資格の取得やITスキルの習得
- 残業時間の削減:優先順位の明確化や、不要な会議の削減
- 副業やフリーランスワークの活用:本業以外での収入源の確保
特に、デジタル化が進む現代では、ITスキルの習得やデータ分析能力を持つことで、業務効率と年収の両方を高める効果的な方法となっています。
ITスキルと年収の関係を示したものが、以下の図です。
この図から、ITスキルの向上が年収アップにつながる可能性が高いことがわかります。
また、時給を上げるためには、自身の市場価値を高めることも重要です。例えば、ITスキルの見直しや、最新のAI技術をキャッチアップするなど、目まぐるしく動くIT業界の中でも自身の付加価値を高め、より高い報酬を得られる可能性が増えます。
つまり、単に長時間労働をするのではなく、効率的に働きながら自己投資の時間を確保することで、長期的には高い時給につながる可能性があると言えます。
まとめ
年収1,000万円の人の時給は、残業を考慮すると4,000円台になることがわかりました。
高収入を得るためには相応の労働時間と責任が必要ですが、同時に効率的な働き方や生活の質の向上も重要です。
単に高収入を目指すだけでなく、自分にとっての幸せや充実感とのバランスを考えながら、キャリアプランを立てていくことが大切です。
効率的な働き方を追求し、スキルアップを図りながら、自分にとっての理想的なワークライフバランスを実現することが、真の意味での成功につながるのかもしれません。