2018年に政府が副業・兼業の促進を打ち出してから、早くも5年以上が経ちました。当初は収入アップのチャンスとして注目を集めた副業ですが、実際に始めてみると想像以上に大変だったという声も少なくありません。実は副業で成功している人と疲れ果ててしまう人には、明確な違いがあるのです。
これから社会に出る若い世代の皆さんにとっても、将来のキャリア設計を考えるうえで、副業の現実を知っておくことは大きな意味があります。今回は、副業ブームの裏側で何が起きているのか、そして無理なく続けられる働き方とは何かを一緒に考えていきましょう。
副業解禁で変わったこと

2018年、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定したことで、日本の働き方は大きな転換点を迎えました。それまで多くの企業が就業規則で禁止していた副業が、少しずつ認められるようになったのです。
しかし、制度が整っても現実は厳しいものでした。パーソルキャリア株式会社が運営するJob総研の「2025年 副業・兼業の実態調査」によると、副業経験者は39.2%に達したものの「現在副業中」と答えた人は21.6%にとどまっています。つまり、約2割の人が副業を始めたものの、途中で辞めてしまっているのです。

副業を始めた人全員が満足しているわけではありません。実際には、副業によって生活の質が向上した人と、かえって疲弊してしまった人に分かれているのが現状です。
うまくいく人と挫折する人の違い

年収とスキルの関係
副業で成功している人たちには、いくつかの共通点があります。興味深いのは、年収層によって副業の実施率が大きく異なることです。Job総研の「2025年 副業・兼業の実態調査」によると、年収701〜1,000万円の層の副業経験率が40.9%と最も高く、一定の所得基盤を持つ中〜高所得層に副業が広がっています。

これは何を意味するのでしょうか。高所得層は本業で培った専門スキルを副業に活かせるため、効率よく収入を得られます。対して、スキルや経験が少ない段階で副業を始めると、時間を切り売りする労働集約型の仕事になりがちで、体力的な負担が大きくなってしまうのです。
理想と現実のギャップ
副業で実際に得られる収入と、理想とする収入には大きな開きがあることがほとんどで、実際に多くの副業経験者がギャップを感じています。なお、うまくいっている人の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- 本業で培ったスキルを活かせる副業を選んでいる
- 週に10時間以内など、無理のない範囲で活動している
- 「1年で50万円貯める」など具体的な目標を設定している
一方、疲弊してしまう人は「とにかく稼ぎたい」という漠然とした動機で始め、本業に支障が出るほど無理をしてしまう傾向があります。
副業ブームが生んだ新しい問題

働きすぎによる健康リスク
副業の普及に伴い、健康リスクなどの新たな問題も起こるようになりました。そのなかでも、働きすぎる点が深刻な問題となっています。現在の労働基準法では、本業と副業の労働時間を合算して管理する仕組みが十分に整っていません。そのため、本業で週40時間、副業で週20時間働いても、法的には問題視されにくいのが現状です。
しかし、週60時間の労働は明らかに過重労働であり、健康を害するリスクが高まります。副業による収入増加と引き換えに、健康を損なってしまっては本末転倒です。
副業への不安や懸念
副業を始める際、多くの人が様々な不安や懸念を抱えています。特に本業との両立や時間管理、収入への期待と現実のギャップに関する懸念が多く見られます。
- 本業との両立の難しさ
- 時間管理の課題
- 収入への期待と現実のギャップ
- 家族の理解を得る難しさ
副業に時間を割くことで、本業に支障が出たり睡眠時間が削られたりして、健康を崩すケースも報告されています。また「副業は簡単に稼げる」と考えて始めると、理想と現実のギャップに苦しむことになります。
実際にはスキルや経験が必要で、時間をかけた努力が求められるのです。これらの不安や懸念を事前に理解し、対策を講じることが、副業を成功させるための重要なステップとなります。
無理なく続けられる副業のコツ

自分に合った副業の見つけ方
これから副業を考えている学生の皆さんや、すでに社会人として働いている方に向けて、無理なく続けられる副業のコツを紹介します。まず大切なのは、副業を行う目的を明確にすることです。単に収入を増やしたいのか、新しいスキルを身につけたいのか、将来の独立に向けた準備なのか。目的によって選ぶべき副業は変わってきます。
次に、自分の生活リズムと体力を冷静に見極めることです。本業で疲れ果てているのにさらに副業で無理をすれば、いずれ破綻してしまいます。まずは週5時間程度から始めて、少しずつ時間を増やしていくのが賢明です。
本業とのバランスを保つ秘訣
副業で成功するためには、本業とのバランスを保つことが何より重要です。具体的には、以下のような工夫が効果的です。
- 本業の繁忙期には副業を控えめにする
- 副業の納期を無理なく設定する
- 休日は完全にオフにする日を作る
また、副業を小遣い稼ぎと捉えるのではなく、長期的なキャリア形成の一環として位置づけることも重要です。例えば、将来起業したいと考えているなら、小規模でもビジネスを始めてみる。特定の分野の専門家になりたいなら、その分野での副業を通じて実績を積む。このように、副業を自己投資の機会として活用することで、収入増以上の価値を得ることができます。
まとめ
副業解禁から5年以上が経ち、よい部分と厳しい部分が明確になってきました。たしかに副業は収入を増やし、新しいスキルを身につける機会を提供してくれます。しかし同時に、働きすぎによる健康リスクや、生活満足度の低下といった問題も抱えているのです。大切なのは「稼げる金額」だけでなく「無理なく続けられるか」と「自分の人生における意味」を考えることです。
無理のない範囲で本業とのバランスを取りながら、長期的な視点で副業に取り組む。そうすることで、副業はただの収入源ではなく、人生を豊かにする選択肢のひとつになるはずです。これから社会に出る若い世代の皆さんも、副業の現実を知ったうえで、自分らしい働き方を見つけていってください。

