近年、世界的な投資家として知られるウォーレン・バフェット氏が日本の商社株に大規模な投資を行ったことが大きな話題となりました。「投資の神様」と呼ばれる彼が、なぜ今、日本に注目しているのでしょうか。実は、バフェット氏だけでなく、多くの外国人投資家が日本株を積極的に購入しています。
一体、海外の投資家たちは日本のどこに魅力を感じているのでしょうか。今回は、外国人投資家の視点から見た日本市場の魅力と、私たち個人投資家が学ぶべきポイントについて、分かりやすく解説していきます。日本で生活している私たちには見えにくい、客観的な日本の価値を一緒に発見してみましょう。
バフェットが見抜いた日本企業の真価

ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイ社は、2020年から日本の五大商社への投資を開始しました。以下のとおり、現在では各社の株式を約10%前後保有しています。
バークシャー・ハサウェイの日本商社株保有状況(2025年8月)
企業名 | 保有比率 | 特徴 |
---|---|---|
三菱商事 | 10.23% | 総合商社最大手、資源・エネルギー分野に強み |
三井物産 | 9.82% | 資源・エネルギー、機械・インフラに注力 |
住友商事 | 9.29% | メディア・デジタル、資源・化学品が主力 |
丸紅 | 9.30% | 電力・エネルギー、食料・農業に強み |
伊藤忠商事 | 8.53% | 繊維・機械、食料分野でトップクラス |
バフェット氏が日本の商社に注目した理由は明確です。これらの企業は世界中に事業を展開し、エネルギー、食料、金属など、人々の生活に欠かせない資源を扱っています。特に注目すべきは、これらの商社が単なる仲介業者ではなく、実際に資源開発や製造業にも参画している点です。
商社の多角的なビジネスモデル
日本の商社は、以下のような特徴を持っています。
- グローバルなネットワーク:世界各地に拠点を持ち、現地の情報を迅速に収集
- 多様な事業領域:資源開発から小売業まで、幅広い分野に投資
- 長期的な視点:短期的な利益よりも、持続可能な成長を重視
これらの特徴は、バフェット氏の投資哲学である「長期投資」「分散投資」「優良企業への投資」と一致しています。
外国人投資家が注目する日本市場の魅力

割安な株価水準
長年にわたって日本株は海外市場と比較して割安な水準で推移してきました。PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった指標で見ると、アメリカや欧州の株式市場よりも魅力的な水準にあります。
- PER(株価収益率):企業の株価が1株当たり純利益の何倍になっているかを示す指標
- PBR(株価純資産倍率):株価が1株当たり純資産の何倍になっているかを示す指標
一般的にPERの目安は15倍とされており、15倍よりも高ければ割高、低ければ割安と判断されます。また、PBRについては1倍が目安とされ、1倍を下回ると市場から過小評価されている可能性があります。
日本市場では、2025年時点でも多くの企業がこれらの指標で割安な水準にあり、特にPBR1倍割れの企業が多数存在しています。これは、企業の解散価値よりも株価が低い状態を意味しており、外国人投資家にとって魅力的な投資機会となっています。
企業統治改革の進展
近年、日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)改革が着実に進んでいます。2015年にコーポレートガバナンス・コードが導入されてから、日本企業の経営はより透明で効率的になってきました。
コーポレートガバナンス・コード:企業が株主をはじめとする利害関係者の権利・利益を尊重し、持続的な成長を実現するための行動規範
このコードは従来の「守りのガバナンス」から「攻めのガバナンス」への転換を促し、企業の成長性を高めることに重点が置かれています。金融庁は継続的に改革の実質化を求めており、企業は形式的な対応から脱却し、真の企業価値向上に向けた取り組みが期待されています。
こうした改革の結果、独立社外取締役の増加、指名・報酬委員会の普及、投資家との建設的な対話の促進などが進んでいます。これらの変化により、日本企業は海外投資家からも信頼される存在となり、外国人投資家にとって日本市場はより魅力的な投資先となっているのです。
技術力と品質の高さ
日本企業が持つ高い技術力と品質管理能力は、世界的に高く評価されています。特に製造業においては「ものづくり」の精神が根付いており、長期的な競争優位性を持っています。特に、以下のような分野で日本企業は世界をリードしています。
- 自動車産業:トヨタ、ホンダなどの高品質な車両
- 電子部品:村田製作所、京セラなどの精密部品
- 素材産業:信越化学、東レなどの先端材料
これらの企業は一見地味に見えるかもしれませんが、世界中の製品に欠かせない部品や材料を供給しており、非常に重要な役割を果たしています。
個人投資家が学ぶべき投資の視点

長期的な視点
バフェット氏の投資手法から学べる最も重要なポイントは、長期的な視点を持つことです。短期的な株価の変動に一喜一憂するのではなく、企業の本質的な価値を見極めることが大切です。
分散投資の効果
商社への投資は、実質的に世界中のさまざまな事業への分散投資を意味します。一つの事業が不調でも、ほかの事業でカバーできるためリスクを分散できます。個人投資家も、特定の業界や地域に偏らない投資を心がけることが重要です。
企業の競争優位性を見極める
投資する企業を選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 独自の技術や特許を持っているか
- 市場での地位は安定しているか
- 将来性のある事業を展開しているか
これらの要素を持つ企業は、長期的に成長する可能性が高いと考えられます。
日本経済の今後の展望

デジタル化の進展
コロナ禍を機に、日本でもデジタル化が急速に進んでいます。これまで遅れていたIT分野での投資が活発化しており、新たな成長機会が生まれています。
ESG投資の拡大
ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが世界的に重視される中、日本企業も積極的に対応しています。特に環境技術においては、日本企業が世界をリードする分野も多く、今後の成長が期待されます。
ESG:Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)の頭文字を取った言葉で、企業の持続可能性を評価する指標
まとめ
外国人投資家の日本株への注目は、一時的なブームではありません。バフェット氏をはじめとする世界的な投資家たちは、日本企業の本質的な価値と将来性を正しく評価しているのです。私たち日本人にとって当たり前に感じられるものづくりの精神や長期的な視点、品質へのこだわりこそが、実は世界から高く評価される日本の強みなのです。
若い世代の皆さんも、将来の投資や就職を考える際にこうした日本企業の特徴を理解し、グローバルな視点を持つことが重要です。外国人投資家の視点を学ぶことで、私たち自身も日本の真の価値を再発見し、よりよい投資判断ができるようになるでしょう。投資は決してギャンブルではなく、企業や経済の成長に参加する手段なのです。