前編では日本の若者の政治参加の現状と課題について見てきました。
後編では最新の選挙結果から見える変化と、より具体的な解決策について考えていきます。特に注目したいのは、若者の政治参加が増えなければ、高齢者主導の政策決定が続くという課題です。
最新の選挙から見える若者の投票行動

2024年10月の衆議院選挙における18・19歳の投票率を見てみましょう。
年齢・性別 | 投票率 |
---|---|
年齢・性別 | 投票率 |
18歳女性 | 49.86% |
18歳男性 | 48.60% |
19歳女性 | 37.28% |
19歳男性 | 36.09% |
18歳の投票率が、19歳より12.54ポイント高いことが特徴です。これは、学校での主権者教育や周囲からの投票の呼びかけが影響していると考えられるでしょう。また、女性の投票率が男性をわずかに上回っている点も注目です。
日本財団が実施した18歳の意識調査によると、政党首脳選の影響で約48%の若者が「政治への関心が高まった」と回答。また、次期総選挙での投票意向も50%を超えており、若者の政治参加意識が高まっていると考えられます。
若者の新たな政治参加の形

デジタル技術を活用した選挙運動
2024年の選挙では、SNSを効果的に活用した政党が若年層から支持を集めました。特に国民民主党は、オンラインでの選挙活動を展開し、議席数を4倍に増やすことに成功しているのです。
TikTokやInstagramを活用した政策発信は、若者が政治への理解を深めるための新しい手法として注目されています。
投票促進プログラムの展開
投票を促す新しい取り組みとして「センキョ割」プログラムが注目を集めています。これは投票証明書の提示により、飲食店やカフェ、結婚相談所などで特典が受けられる仕組みです。2024年の選挙では全国200以上の企業が参加し、若者の投票率向上に貢献しました。
若者の政治的関心事
日本財団の調査によると、若者が新総理大臣に期待するものは以下のとおりです。

また、これからの政治で注力してほしいテーマとしては、以下のものが挙げられました。
- 少子化・子育て支援:38.2%
- 経済・景気対策:34.0%
- 教育:24.3%
この調査結果から、若者たちが少子化対策や経済政策といった社会の根幹に関わる課題に関心を持っていることがわかります。
特に少子化・子育て支援への期待が最も高く、将来の家族形成や子育て環境に対する若者世代の切実な思いが表れていいるのではないでしょうか。また、経済・景気対策への高い関心は、若者の雇用や生活への不安を反映していると考えられます。
高齢者主導の社会を防ぐために

シルバー民主主義の現状
現在の日本では、65歳以上の高齢者が有権者全体の約35%を占めている一方で、18歳から34歳までの若年層は約20%にとどまっています。この世代の偏りは、政策決定にも大きな影響を与えているのです。
世代間格差の実態
高齢者の投票率の高さと相まって、政策に偏りがあるといえるでしょう。特に以下の分野では、世代間の格差が浮き彫りになっています。
- 社会保障費:高齢者向け給付が年間約80兆円に対し、子育て支援給付は約8兆円
- 教育支援:教育費の私費負担率が65.6%(OECD平均29.3%)
- 住宅支援:若者向け支援が高齢者向けの1/3の予算規模
これらの数字が示すように、現在の日本では若者世代への支援が不足しており、将来への投資が十分に行われているとはいえない状況です。
若者の声を反映させる重要性
このような世代間の格差をなくすためには、若者が政治へ積極的に参加しなければなりません。特に年金制度改革や教育費の公的支援、子育て支援の拡充といった分野では、若者世代の視点を取り入れた政策立案が求められています。
将来の日本社会を支える若者たちの声を反映させることで、持続可能な社会保障制度が構築できるのではないでしょうか。
日本の政治における具体的な改革案
投票アクセスの改善
各国の成功例を参考にすると、オンライン投票システムの導入を検討していかなければなりません。また、投票の利便性を向上させるために、以下のような施策も求められます。
- 大学キャンパス内の投票所設置
- ショッピングモール内の期日前投票所
- 投票所への無料シャトルバス運行
- 投票時間の延長
これらの施策により、政府は若者の投票率を現在の34.2%から50%以上に引き上げることを目標としています。特に、スマートフォンを活用したオンライン投票システムは、若者の投票参加を促進する重要な施策として期待されています。
政治教育の刷新
若者の政治参加を促す新しい教育プログラムもはじまっています。たとえば「Japan Youth Council」は、環境問題やジェンダー平等など、6つの作業部会を通じて若者の政策提言活動を支援しています。2024年には全国50以上の大学が参加し、3,000人以上の学生が活動に携わっています。
まとめ
若者の政治参加には、まだまだ多くの課題が残されています。しかし、デジタル技術の活用や新しい投票促進プログラム、教育改革の取り組みなど、変化が見えはじめていることも事実です。
特に重要なのは、高齢者主導の政策決定から全世代型の政策決定への転換です。そのためには、若者たちが政治を自分事として捉え、主体的に参加できる環境を整えなければなりません。教育現場での取り組みの充実化や、投票のしやすさの向上、そして何より若者の声に耳を傾ける政治の実現が求められています。